「再建か解体か」――その選択の重さを忘れてはならない
〜能登半島地震・被災者の声より〜
能登半島地震では、「公費解体」の前に実施される応急危険度判定の現場で、私は何度も立ち会い、矛盾を感じてきました。
応急危険度判定では、建物の状態に応じて「赤紙(危険)」「黄紙(注意)」「緑紙(使用可)」といった判定がなされます。
全壊している家に「赤紙」が貼られるのは当然としても、外見上しっかりと建っている家までもが、「基礎が損傷している」との理由で赤紙判定となる例が少なくありませんでした。
私は過去、全国各地で同様の被災状況を見てきました。
たとえ基礎が傾いていても、ジャッキアップで基礎を直し、引き屋で建物の傾きを修正すれば再生可能な家は多いのです。
にもかかわらず、今回の判定では「住める家」にも一律のように赤紙や黄紙が貼られ、結果として公費解体の対象となっていきました。 ■ 瓦屋根の美しい家が壊されていく
奥能登には、瓦屋根の美しい伝統的な家々が多く並んでいます。
それらの家々が、「住める状態」であるにもかかわらず解体されていく現場を、私は何度も目の当たりにしました。
公費解体が始まると、家の持ち主は必ず立ち会わなければなりません。
立ち会った方々の中には、目の前で家が壊されていく様子に、泣き崩れる人もいました。
そこには、家族の記憶が、生活の歴史が詰まっていたのです。
「まだ住める」「修理できる」と思っていた家が、行政の判断によって突然「解体される家」に変わってしまう現実――
これはあまりにも重く、あまりにも突然すぎました。
■ 今になって「再建相談」の告知が始まった
いま、石川県では「住まいの再建(建替え・修理)」に関する相談窓口を設置したという告知が出ています。
ですが――
「公費解体」の期限が来た今になって、なぜこのような案内が出るのでしょうか?
本来であれば、もっと早い段階で、石川県職員や全国の応援職員が一軒一軒丁寧に対応し、住民と一緒に「解体か再建か」を考える時間を設けるべきだったのではないでしょうか。
結果として、今もなお申請を迷っている方々がいます。
それは「時間がなかったから」ではなく、時間をかけてもらえなかったからです。
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■ 私たちは、何を優先すべきだったのか
被災地では、迅速な対応が求められるのは確かです。
しかし、スピードのために大切なものが見落とされては本末転倒です。
壊すよりも、直す方法はなかったのか?
住民の声にもっと耳を傾ける余地はなかったのか?
これからの復興支援において、私たちはこうした問いかけを繰り返しながら、一人ひとりの生活に寄り添った支援とは何かを、深く見つめ直す必要があります。
https://www.pref.ishikawa.lg.jp/kenju/oqkiken.html